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with five senses
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あ、来た来た。

「いらっしゃいませ」

僕が声をかけると、彼女は少し微笑んだ。

「お好きな席へどうぞ」

名前も知らない。年齢もよくわからない。
学生なのか、社会人なのか、主婦なのか。
見当もつかない。
彼女について知っていることと言えば、
料理を待つ間に必ず一度はため息をこぼすこと。
食事はもちろんだけど、器や小物も楽しんでくれていること。
だけど、毎週金曜日の13時前後にしか現われなくて、
1時間以内に立ち去ってしまうこと。

そんな彼女の訪れを僕はいつも待っている。
常連さんと呼べるお客さんは他にも何人かいるのに
彼女だけが僕の関心をさらっていく。

今日も彼女は、窓際にある一輪挿しを見つめて、ため息ひとつ。
小さな紫陽花が開け放した窓から流れてくる風に揺れている。
この花器を彩る命が向日葵に変わるころには
僕はもう少し、彼女の近くにいけるだろうか。

「ごちそうさま」

お代を置いて、今日も彼女が帰っていく。

「ありがとうございました」

限定10食のランチ。
金曜日は彼女が来るとわかっているから、
こっそり1食分確保してある。

オーナーの権限。これくらいはいいよね。
いつか彼女がため息をつかなくなる、その日まで。
僕はこの場所を彼女のために用意し続ける。
待っているから、またおいで。

♪ Chage & Aska

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