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with five senses
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待ち合わせの時間はPM2:00
現在の時刻はPM1:00

オープンテラスで食後のエスプレッソが運ばれて来るのを待っている間にメールする。

"B2駐車場C-5シルバーのセダンにて待つ"

デミタスカップをあっという間に飲み干すと
電子マネーで手早く会計を済ませ
地下駐車場へのエレベーターに乗り込んだ。

PM1:45

携帯を何度も確認してみたり
バックミラーでヘアスタイルをチェックしてみたり
ドキドキというよりは、そわそわしていた。

また、入庫を知らせるブザーが地下に響く。
そろそろ来るのではないかと思うから
本当は気になっているのに
相手にそれを悟られたくなくて、無関心を装う。
この時間ときをすごく楽しみにしていたなんて
受取られたら、悔しいじゃない。

足音が近づいてくる。
通り過ぎるのか、それともここで止まるのか。
息を潜め、相手の出方をうかがっているなんて
まるで刑事ドラマの登場人物にでもなったかのような気分。

そして、足音は止まった。

あなたが現われるのを今か今かと待っていました
なんて思われたくなくて、いつのまにか閉じていた瞳をゆっくり開く。
顔の向きを正面に固定したまま、目だけを右に動かすと
濃紺の麻のスーツにパステルブルーのシャツという
実に爽やかで清潔感あふれるいでたちの男が
まさにこの運転席の窓を叩こうとしているところだった。

ゆっくりと首を右に回すと10人いたら7人は感じがいいと思うであろう
笑みを浮かべた男と目が合った。

連れて歩くには申し分ない外見。

わたしは彼のシャツにしっかりアイロンがかかっていることと
靴が丁寧に磨かれているものであることをチェックする。
それと同じように彼が、わたしの毛先、指先に視線を走らせるのを感じた。

お互い笑顔を貼り付けて、相手の様子伺いをしている。
穏やかな表情の中に混在する緊張感。

選ぶ権利は、わたしだけじゃなくて貴方にもあるから、仕方ないわよね。

少し不躾とも思える彼の視線にわたしは耐える。

けれども次の瞬間、わたしは顔を赤くすることになる。
ドアを開けて車を下りたわたしに彼は言ったのだ。

「どういう風の吹き回し?」

怒りたいのに恥ずかしくて、悔しいのに図星だから
何も言い返せない。

「慣れてないよね? いや、それどころか初めて、なんじゃない?」

「だったら?」

面倒だ、とでも言いたいの?

「今日の相手がボクでよかったね。 さ、行こうか。」

わたしの顔色などお構いなし、と言わんばかりの
さきほどまでの変わらない笑顔で、彼は先に進もうとする。

一方のわたしは、一歩を踏み出すことが出来ず、
どうしたの?と視線だけで問いかけてくる彼に苛立ちをつのらせる。

そんなわたしを見て楽しんでいるだろう彼の横をすり抜けようとして
咄嗟の思いつきで、軽く触れたその腕に自分の腕を絡めてみた。

予想外のわたしの行動に彼は驚いていたけれど
わたしだって、思いがけず相手の端正な顔を近くに感じることになって
びっくりしていた。

「急がないと時間に遅れるよ?」

「あぁ、うん。」

歩き始めたわたしたちは、きっと何の違和感もなく
街の風景に溶け込んでいる。
たぶん誰も気付かない。

2人が週に一度の恋人であることになど。

♪ DREAMS COME TRUE

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