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with five senses
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《150,000HITS御礼(?)小話》

「今日はどうだった?」
そう聞かれたから、一緒にいた彼のことを話した。
それが当たり前のようでいて、特別な意味を持つことに気付かずに。

一日の終わりに彼のことを話したたくさんの言葉たち振り返って、
前回と同じ道を辿ろうとしている自分を知って愕然とした。
久しぶりの恋の予感に少しだけ期待を膨らませていた数日前に戻りたい。
想いが届く、なんて己惚れていたわけじゃない。
気持ちを伝えようなんて大それたことを考えていたわけではないから。
だから彼に彼女がいるとわかっても、別に驚かなかった。
たとえ彼女がいても、仕事上必要であればコンパに行くこともあるんだって
妙に冷めた頭で受け止めていた。

ただ密やかに、数年ぶりに自分の中に芽生えた好意的な感情を
大切にしたいと思っただけなのに。
わたしの全てで愛して、引き返せなくなった人の時と
同じ方法で、彼を感じて彼を語っている。
このままだとまたわたしは恋で自分を滅ぼしてしまう。
あのとき赦された失敗も、この年齢になるともう取り返しがつかなくなる。
これ以上はダメ。


押しが強くてまっすぐで。
駆け引きという言葉を知らない。

わたしの仕事の仕方を彼はそう評価した。
仕事だけじゃない。
恋愛も人生もわたしは同じやり方しかできないみたい。

恋する数が多いわけではないのに、
どうして後ろめたい恋ばかりになるのだろう。

また傷ついたわたしの羽。
次に飛び立つためには、あとどれくらいの時間がかかるだろう。
きっと今ならまだ大丈夫。
傷はまだ浅い。
なぜなら、6年8ヶ月と12時間。
わたしはあの人を想い続けたけれど、
彼へ寄せる好意に気付いたのは、6日と8時間12分前のこと。

♪ Brian McKnight

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《帰省中の新幹線の中で。今日から9連休♪》

「私ね、男の人のこと、好きになれないみたい。」

オレのベッドの上にペタンと座ったまま、女は言った。
ふわりと広がったフレアスカートから無防備に白い素足が伸びている。
「仲のいい女友だちに抱き締められるのは平気なの。
自分から腕を組んで歩くこともあるし…でも、男の人はダメ。
触れられたくないし、抱き締められるなんて考えたくもない。
好きって思う人はいるけど手を繋ぎたいと思わないし、
当然、キスしたいとか、その先なんて考えたことない。考えられない。」

手を伸ばせば触れられる距離にいる。
想いを寄せている男の前で、オトコという人種に分類されるというだけで、
オレとキョリを置こうとする彼女が腹立たしくもあり、悲しくもあった。

「オンナとして、これじゃダメなんだろうなって思うけど…
いまは結婚はもちろん恋愛に対しても憧れはないな」
そんなことをいう口は塞ぐよ?

考えたくない、考えられないというのなら、いますぐここで押し倒してやろうか?

言えるはずもない黒いセリフが、オレの中で渦巻いているなんて、
目の前の女は思ってもいないのだろう。

なぁ、お前のまわりには今までよほどイイ男がいなかったんだな。
オレに出会ったんだから、その価値観、変えてみろよ。捨ててみろよ。
傷付けるかもしれないけど、大切にするから。
これまでお前がオトコたちから浴びせられてきたコトバを忘れさせてやるから。

オレの熱い視線に気付きもしないで、女は時計を見上げた。
「あ~っ、もうこんな時間だ。明日も仕事なんだからもう寝なきゃね。
ごめんね、長居して、愚痴きいてもらって。」
ベッドから足を下ろした彼女は、オレ好みの華奢なミュールをひっかける。
少し弾みをつけて立ち上がって皺が延びるわけではないのに、
ふわりとスカートをはらった。

まだ帰るなよ。オレの話を聞けよ。
そう言ってしまいたいのに、彼女が仕事のことしか考えられないのを知っているから、
声が喉の奥に張り付いたまま出てこない。

「じゃあ、お休み。明日ね。」

ドアの外から手をふる彼女に「おぅ」と短く返事した。

お前が危なっかしいから守りたいんだといったら、仮面をつけて笑うのか?
「意外にロマンチストなんだね」とか
「案外、古典的なんだね」とか言うんだろうか。
だけど、そんなふうにオレに思わせているのは、他の誰でもないお前なんだぞ。

なぁ、仕事の時にみせるあの強い責任感で、オレの想いの責任をとってくれよ。

彼女がそこに座っていた証であるシーツに残る皺にオレはそっと頬を寄せた。

♪ AI

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寒がりなわたしの肩に、暑がりな彼のジャケット。
少し動くだけで、ふわり。彼の香りが拡がる。
そのたびにわたしがドキドキしているなんて
隣にいる彼はきっと知らない。
気付かれてしまったら困るから、今のままでよいのだけれど。

こうして羽織ってみると彼がオトコであることを改めて感じてしまう。
小柄に見えてもやっぱり肩幅があるんだなとか。
背中は広いんだなとか。

こんな感情があることなんて知りたくなかった。
何も知らずに生きてゆけたなら、
この切なさに、微かなこの胸の痛みに
悩み苦しむこともなかったのに。

この先にあるものを知りたいけれど、
そこに見つけられなかったらと思うと
怖くて前に進めない。

だから私は知らないふりをする。
求めないようにと自分にいいきかせる。
冷めているふりをする。
熱くならないようにブレーキをかける。
いま以上、涙を流すことがないように。

♪ 浜崎あゆみ

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「ごめん、緊急の仕事がはいっちゃった。」
彼女が申し訳なさそうに電話してきたのが、約束していた時間の15分前。
あれから軽く3時間は経っている。
最初の1時間は、本を読みながら待っていた。
次の1時間はソファでウトウトしていた。
今夜は長いから体力を温存しておこうと思ったわけではないけれど。

そして、この1時間は彼女がここにやって来る途中のどこかで事故に巻き込まれたのではないかという不安がちらつくようになって、携帯を握り締めて部屋の中をウロウロしている。
仕事とわかっているから、彼女に電話することも躊躇われて、久しぶりのデートなのに、どんどん自分の気持ちが萎えていくのがわかった。

「何時まで仕事するつもりだよ。」
声に出してみても、返事があるわけない。
「今日くらい、仕事より俺を優先してくれてもいいんじゃない?」

"それは無理"
彼女のドライな声が聞こえてきそうな気がした。
出かけてしまおうか。
車のキーに手を伸ばす。
頭の中には、俺に気のあるような視線を送ってくる女の子の顔がいくつか浮かんでいる。

誰でもいいや。

テンションを上げるために、持っている中で一番派手なスニーカーに足を突っ込んだ。
投げやりな気持ちでドアを開けると、ドンっと鈍い音が響いた。

目の前には、肩で息をしている彼女。
彼女は一瞬、目を大きく広げて、すぐにその表情を曇らせた。
「ごめん、遅くなって。これでも急いで来たんだけど。」

足元に視線を落として、パッと顔をあげた彼女は、俺の知らなかった微笑を浮かべていた。
「これ…よかったら使って?」
手渡されたのは片手で受け取れる小さな箱。
「誕生日おめでとう」
彼女がゆっくり音にしたそれは、いままでに聞いたどんなフレーズよりも心地よかった。
「ああ」
言葉を奪われてしまった。何も言えなかった。

「出かけるところだった?」
キーを握っている俺の手をチラリと見た彼女。
「帰るって言うなよ。」
そのまま身を引いてしまいそうな彼女。
「…うん。今日は遅くなってごめんね。」

彼女がくれた万年筆で詩をうたうのはあとでいい。
いまは、彼女の声を聞いていたいから。
明日は土曜日。
仕事の話をする口は塞いでやる。

♪ John Lennon

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《鯨記念日に寄せて新作です》

何日も留守にしていた部屋の空気は流れのない川の水のように淀んでいる。
室内の空気はもわっと湿気を含んでいて、静かな暗い川底のようだ。
私は息苦しくなって、酸素を求めて水面に顔を出す池の鯉のように、窓を開けて口をパクパクさせた。
都会の空気は熱いと思っていたけれど、アクアブルーの薄いカーテンを揺らす風は涼しくて、遠くから微かに運ばれてくる潮の香が心地よい。
聞こえるはずのない、何㎞も先の海岸に打ち寄せる波の音が聞こえた気がした。
窓辺から離れられなくなった私の耳に届いたのが寄せては返す真夏の記憶であることに気付いたら、つっと頬を涙がつたった。

幸せだった。楽しかった。
だから突然、怖くなった。
愛しすぎることが。
愛され過ぎることが。

貴方がいなければ、生きられなくなるような自分にはなりたくなかった。
貴方がいなくても、生きていける私を確かめたかったのかもしれない。

逃げ出したのは私。
追い掛けてくれなかったのは貴方。

それを責めることは出来ないから、私は振り返ったまま立ち尽くす。
一緒に歩いて行きたいと思っていたのに、こんなに傷付けた。
いつも貴方に抱き締められて、守られていると思っていたのに、こんなに傷付いた。

淋しいなんて言えない。
感情は溢れた涙が全て流してしまったから。
止まることを知らない時計の針は錆び付いて、キイキイなきながら回る。
動かなくなってしまえば、私は前に進めていないことに気付かなくてすんだのに。

私が傷付けた貴方は今、どこにいる?
荒れる感情の波に左右されない深い深い海の底を泳いでいるの?
貴方が愛の海にいるから知らなかった。
体の割に小さな瞳から溢れる涙に。

私を空を飛ぶ魚にしたのは貴方。
胸がいっぱいなのに、酸素が足りなくて一所懸命、息をしていた。

貴方がいなくても、生きていけるとわかったけれど、貴方がいなきゃ毎日が味気無いものなのだとわかったの。

私が貴方を傷付けたから、もうあの夏には戻れない。

戻れないのは私のせい。
進めないのは貴方のせい。

♪ The Gospellers

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《七夕小話です》

お疲れさまと言いながら身体を滑り込ませる車の助手席。
オフィスの前は幹線道路ではないけれど、夕方から降り始めた雨のせいで交通量が多くなっている。

僕を乗せると同時に彼女の車は動き始めた。
「今年も晴れなかったね」
シートベルトを締めながら僕は彼女を見つめる。
雨が降っていても、会えてよかったと思いながら。
「そういえば去年も天気悪かったよね」
雨まで降っていたかどうかは思い出せないけれどと車の後方を黙視確認しながら彼女は言った。
そんな様子を見ていると、僕が運転しようかって言いたくなるけれど社有車だからダメなんだって。
たとえ僕が事故を起こさなくても、事故に巻き込まれてしまう可能性だってあるんだからと彼女は真面目な顔で主張する。

とりあえず早くここを抜け出したい。
どこか車を止められるところを早く見つけよう。
このままじゃ、やっと会えた彼女の手を握ることさえできないから。
毎日仕事で使っているくせに、運転には自信がないという彼女は
しっかり両手でハンドルを握っている。
ご丁寧に10時と2時の位置で。

マニュアル車で免許を取っている僕が運転すれば、
こうしている間だって手をつないでいられるのに。
雨を含んだ重い雨雲と同じように不満を含んだ僕の気持ちは下がっていく。
珍しく彼女が早い時間に仕事を終わらせて、僕の誘いに応じてくれることに
喜んでいた数十分前に戻りたいほど低気圧のど真ん中。

こんな風に会えるのは久しぶりなのにちっとも会話が弾まない。
その原因の在り処なんてわからない。

「今年も会えてよかった」
去年の願い事は"来年も会えますように"だったのだと彼女は教えてくれた。
運転中なのにチラリと僕の顔を見て。

彼女は今日、僕との時間を作るためにいつもより早く家を出たはずだ。
たとえたった1日のほんの数時間のことであっても
プライベートのために仕事を削るような女じゃないから。

そんな不器用な生き方しか出来ない彼女がいとしいのだけれど
そのせいで僕はひどく切ない気持ちになることが多い。
僕と彼女のことだけを考える時間を契約して欲しいけれど
僕と彼女の想いは星屑になって天の川に流される。

もっと近くに感じて欲しいのに、なぜか彼女は僕を彼女の世界の外に置きたがる。
今年も「来年も会えますように」と願ってくれるだろうか。

どうしようもないほど僕は彼女が好きだから、
どうしようもないのに僕は星に願って
彼女が2人の時間を契約してくれる日を待ちつづける。

ようやく渋滞の道から離れた彼女が路肩に車を寄せた。
シートベルトを外してハザードをつける。
カチカチという点滅にシンクロさせながら僕は彼女にキスをする。

流れ星が見えなくても、願いがきっと叶いますように。

♪ Skoop On Somebody / 佐藤竹善

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《短すぎる新作小話:深い意味はございません・笑》

無言のままで彼は私の薬指から指輪を抜き取る。
今夜も私は彼の手によって壊される。

「いつまでこの安っぽいヤツしてるつもり?
 買ってやるって言ってるのに」

全てを外し終えた彼はピアスをしていない私の耳たぶを甘噛みする。

「いいよ、別に」
「お前が気にしなくても、俺が買ってやりたいの」
「気持ちだけで十分。
 新しいのを買うお金がないからっていう理由でコレしかつけないわけじゃないんだから」
「ホントに欲のないヤツ」
「そんなことないよ。私みたいなのが一番欲深いんだから」

私は微笑みながら彼の首に腕をまわす。

自分で買った陳腐な指輪を彼に外してもらうことで私は壊れる。
独りで壊れることのできない私は彼の手に逃げ込む。
彼の手によってもたらされる自由は、この上ない快感。
彼によって解放されるこの瞬間のために、私はこのリングを身に付ける。
だから明日もお願い
指輪はずして…

♪ The Gospellers

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