with five senses
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《七夕小話です》
お疲れさまと言いながら身体を滑り込ませる車の助手席。
オフィスの前は幹線道路ではないけれど、夕方から降り始めた雨のせいで交通量が多くなっている。
僕を乗せると同時に彼女の車は動き始めた。
「今年も晴れなかったね」
シートベルトを締めながら僕は彼女を見つめる。
雨が降っていても、会えてよかったと思いながら。
「そういえば去年も天気悪かったよね」
雨まで降っていたかどうかは思い出せないけれどと車の後方を黙視確認しながら彼女は言った。
そんな様子を見ていると、僕が運転しようかって言いたくなるけれど社有車だからダメなんだって。
たとえ僕が事故を起こさなくても、事故に巻き込まれてしまう可能性だってあるんだからと彼女は真面目な顔で主張する。
とりあえず早くここを抜け出したい。
どこか車を止められるところを早く見つけよう。
このままじゃ、やっと会えた彼女の手を握ることさえできないから。
毎日仕事で使っているくせに、運転には自信がないという彼女は
しっかり両手でハンドルを握っている。
ご丁寧に10時と2時の位置で。
マニュアル車で免許を取っている僕が運転すれば、
こうしている間だって手をつないでいられるのに。
雨を含んだ重い雨雲と同じように不満を含んだ僕の気持ちは下がっていく。
珍しく彼女が早い時間に仕事を終わらせて、僕の誘いに応じてくれることに
喜んでいた数十分前に戻りたいほど低気圧のど真ん中。
こんな風に会えるのは久しぶりなのにちっとも会話が弾まない。
その原因の在り処なんてわからない。
「今年も会えてよかった」
去年の願い事は"来年も会えますように"だったのだと彼女は教えてくれた。
運転中なのにチラリと僕の顔を見て。
彼女は今日、僕との時間を作るためにいつもより早く家を出たはずだ。
たとえたった1日のほんの数時間のことであっても
プライベートのために仕事を削るような女じゃないから。
そんな不器用な生き方しか出来ない彼女がいとしいのだけれど
そのせいで僕はひどく切ない気持ちになることが多い。
僕と彼女のことだけを考える時間を契約して欲しいけれど
僕と彼女の想いは星屑になって天の川に流される。
もっと近くに感じて欲しいのに、なぜか彼女は僕を彼女の世界の外に置きたがる。
今年も「来年も会えますように」と願ってくれるだろうか。
どうしようもないほど僕は彼女が好きだから、
どうしようもないのに僕は星に願って
彼女が2人の時間を契約してくれる日を待ちつづける。
ようやく渋滞の道から離れた彼女が路肩に車を寄せた。
シートベルトを外してハザードをつける。
カチカチという点滅にシンクロさせながら僕は彼女にキスをする。
流れ星が見えなくても、願いがきっと叶いますように。
お疲れさまと言いながら身体を滑り込ませる車の助手席。
オフィスの前は幹線道路ではないけれど、夕方から降り始めた雨のせいで交通量が多くなっている。
僕を乗せると同時に彼女の車は動き始めた。
「今年も晴れなかったね」
シートベルトを締めながら僕は彼女を見つめる。
雨が降っていても、会えてよかったと思いながら。
「そういえば去年も天気悪かったよね」
雨まで降っていたかどうかは思い出せないけれどと車の後方を黙視確認しながら彼女は言った。
そんな様子を見ていると、僕が運転しようかって言いたくなるけれど社有車だからダメなんだって。
たとえ僕が事故を起こさなくても、事故に巻き込まれてしまう可能性だってあるんだからと彼女は真面目な顔で主張する。
とりあえず早くここを抜け出したい。
どこか車を止められるところを早く見つけよう。
このままじゃ、やっと会えた彼女の手を握ることさえできないから。
毎日仕事で使っているくせに、運転には自信がないという彼女は
しっかり両手でハンドルを握っている。
ご丁寧に10時と2時の位置で。
マニュアル車で免許を取っている僕が運転すれば、
こうしている間だって手をつないでいられるのに。
雨を含んだ重い雨雲と同じように不満を含んだ僕の気持ちは下がっていく。
珍しく彼女が早い時間に仕事を終わらせて、僕の誘いに応じてくれることに
喜んでいた数十分前に戻りたいほど低気圧のど真ん中。
こんな風に会えるのは久しぶりなのにちっとも会話が弾まない。
その原因の在り処なんてわからない。
「今年も会えてよかった」
去年の願い事は"来年も会えますように"だったのだと彼女は教えてくれた。
運転中なのにチラリと僕の顔を見て。
彼女は今日、僕との時間を作るためにいつもより早く家を出たはずだ。
たとえたった1日のほんの数時間のことであっても
プライベートのために仕事を削るような女じゃないから。
そんな不器用な生き方しか出来ない彼女がいとしいのだけれど
そのせいで僕はひどく切ない気持ちになることが多い。
僕と彼女のことだけを考える時間を契約して欲しいけれど
僕と彼女の想いは星屑になって天の川に流される。
もっと近くに感じて欲しいのに、なぜか彼女は僕を彼女の世界の外に置きたがる。
今年も「来年も会えますように」と願ってくれるだろうか。
どうしようもないほど僕は彼女が好きだから、
どうしようもないのに僕は星に願って
彼女が2人の時間を契約してくれる日を待ちつづける。
ようやく渋滞の道から離れた彼女が路肩に車を寄せた。
シートベルトを外してハザードをつける。
カチカチという点滅にシンクロさせながら僕は彼女にキスをする。
流れ星が見えなくても、願いがきっと叶いますように。
♪ Skoop On Somebody / 佐藤竹善
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