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with five senses
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「ごめん、緊急の仕事がはいっちゃった。」
彼女が申し訳なさそうに電話してきたのが、約束していた時間の15分前。
あれから軽く3時間は経っている。
最初の1時間は、本を読みながら待っていた。
次の1時間はソファでウトウトしていた。
今夜は長いから体力を温存しておこうと思ったわけではないけれど。

そして、この1時間は彼女がここにやって来る途中のどこかで事故に巻き込まれたのではないかという不安がちらつくようになって、携帯を握り締めて部屋の中をウロウロしている。
仕事とわかっているから、彼女に電話することも躊躇われて、久しぶりのデートなのに、どんどん自分の気持ちが萎えていくのがわかった。

「何時まで仕事するつもりだよ。」
声に出してみても、返事があるわけない。
「今日くらい、仕事より俺を優先してくれてもいいんじゃない?」

"それは無理"
彼女のドライな声が聞こえてきそうな気がした。
出かけてしまおうか。
車のキーに手を伸ばす。
頭の中には、俺に気のあるような視線を送ってくる女の子の顔がいくつか浮かんでいる。

誰でもいいや。

テンションを上げるために、持っている中で一番派手なスニーカーに足を突っ込んだ。
投げやりな気持ちでドアを開けると、ドンっと鈍い音が響いた。

目の前には、肩で息をしている彼女。
彼女は一瞬、目を大きく広げて、すぐにその表情を曇らせた。
「ごめん、遅くなって。これでも急いで来たんだけど。」

足元に視線を落として、パッと顔をあげた彼女は、俺の知らなかった微笑を浮かべていた。
「これ…よかったら使って?」
手渡されたのは片手で受け取れる小さな箱。
「誕生日おめでとう」
彼女がゆっくり音にしたそれは、いままでに聞いたどんなフレーズよりも心地よかった。
「ああ」
言葉を奪われてしまった。何も言えなかった。

「出かけるところだった?」
キーを握っている俺の手をチラリと見た彼女。
「帰るって言うなよ。」
そのまま身を引いてしまいそうな彼女。
「…うん。今日は遅くなってごめんね。」

彼女がくれた万年筆で詩をうたうのはあとでいい。
いまは、彼女の声を聞いていたいから。
明日は土曜日。
仕事の話をする口は塞いでやる。

♪ John Lennon

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