カブトムシ

結城信孝編　『めぐり逢い　恋愛小説アンソロジー』

平安寿子女史って、HJS(わたしの母校)の卒業生なんだ～
なんて思っていたら、もう聞くことはないだろうと思っていた着メロを
携帯が奏でるではないですか。
時刻は21:40。

不思議に思いながらも応答してしまうあたり、
まだ吹っ切れてないんでしょうね(苦笑)

「こいしぃ～、何しとー？
　ね、今から少し会おうか」
「え？」

問い返したわたしに返事を与えることなく電話は切れ、
どういうこと？と首を傾げていたら、
玄関のドアがノックされるではないですか。

やだ、どうしよう　…
玄関に立ち尽くすこと数十秒。
再びトントンと扉を叩く音。

開けちゃいけない。
だけど迎え入れなければ、きっとカレはごねはじめるでしょう。
夜のマンション廊下で。

結局、カレを部屋にあげてしまいました。
ダイニングで言葉少なに向かい合うこと数分。
「こい、こっちおいで。」

数ヶ月前なら、言われたとおりにしていたでしょう。
ぬくもり恋しいいまのわたしにとって、魅惑的なささやき。
でも　…　カレがワカラナイ

わたしが首を振り続けていると、カレの方がわたしに歩み寄ってきました。

もう会わないほうがいいって言ったのは、カレなのに。
何を思って、訪ねてきたの？
何を思って、わたしの傍にいるの？

♪ aiko